玄の散歩帖

温泉、レトロ、写真など好きなものごった煮ブログ

夕闇通り探検隊・聖地巡礼 後編                          ~かつてあの3人が散歩をした陽見の街へ~

 

前記事に続いて、日野市での夕闇通り探検隊聖地巡礼の様子(後編)です。

ranporetro.hatenablog.com

 

ゆうやみ坂~陽見駅西側ガード下

 

高架下公園のガードを通過して、日野駅へ続く坂道を下っていく。

ここから駅へと至る道が作中におけるゆうやみ坂に相当する場所で、メロスを連れて何度も駆け上がった思い出深い場所。

 

坂の途中で左手に見えた階段。こちらは大階段とは別物なので注意。 

そのまましばらく進むと、道沿いに蔦が垂れ下がる擁壁なんかも見えてきて、なんとなくゲーム内の景色に近い雰囲気が感じられてきた。

かつては駐車場と「菊水ホテルグループ」の看板も残っていたそうだが…

 

日野駅に至る少し手前の所でかの有名な大階段も見えてくるのだが、もう少し日が落ちてから行きたいと思い、ここではいったん通過してそのまま坂道を下りきった。

 

その先の駅前ロータリーの交差点を右折してすぐの所にあるのが、こちらの陽見駅(西側)のガード下である。

作中では陽見の街に漂う穢れや負の感情が集まっている、いわくつきのスポットとして描かれた。

”しょうゆ婆さんの噂”や”新王子線の呪いの噂”など主にホラー系の噂の舞台として登場し、クルミほど霊感が強くないナオでさえ嫌なモノの気配を感じ取った恐ろしい場所。

日中で陽が射していたこともあり、訪問時は作中のようなおどろおどろしい雰囲気は感じられなかったが。

長さというか幅もそこまで無くて、たぶんゲーム内でサンゴで訪れた時よりもずっと短い位だと思う。

なおガード下内部の様子は千駄ヶ谷にある別のトンネルをモデルにしているとの情報もあり、この場所がどの程度厳密に参考とされたかは不明である。

こちらがネットで拾ってきた千駄ヶ谷トンネルとの比較画像。

確かにこっちの方がゲーム内の雰囲気には近いような気もする。

 

宝禄寺~坂上地蔵~烏塚

西側のガード下を通り抜けて駅前通りに沿って進み、最初の交差点を右折すると、作中で宝禄寺として登場したお寺である宝泉寺の入口が見えてくる。

ゲーム内ではこちらにお参りをすることで、上がってしまった霊障ポイントを下げることのできるありがたい場所として登場した。

せっかくなのでお参りしようとも思ったのだが、意外と時間が押していたこともあって残念ながら今回は叶わなかった。

 

西側のガード下に行った後だったし、できればやっておきたかったんだけど(笑)

 

 

そこから少し坂を上っていくと、綺麗なアジサイとお地蔵様に囲まれた、瑞々しい雰囲気のお堂が右手に見えてくる。

坂上地蔵の噂”の舞台として登場した、坂下地蔵堂である。

ゲーム内では大階段を上り切った先にある「坂上」地蔵として登場するが、実際にはそこから少し離れた場所に位置しており、名前も「坂下」地蔵となっている。

説明によればその歴史は古く、作られたのは江戸期にまで遡るとのこと。

当時は宿場町の入口に鎮座して、道行く旅人を見守って下さっていたそう。

作中で登場したお地蔵さんは1体のみだったが、こちらには大きいものと小さいもの、合わせて8体が並び立っていた。

 

坂下地蔵前からもとの道を下って、そこから方向を変えて坂を登り返す。

アスファルトで舗装された坂道をひたすら進む。なかなかの傾斜である。

その坂を登り切ったところで正面に突き当たるのが、こちらの矢の山公園だ。

公園の一角には太平洋・日露戦争における戦没者を弔う慰霊碑が立ち並び、園内にはどことなくしん、とした雰囲気が漂っている。

その中でもひときわ目立つ、殉国慰霊塔が作中の回想シーンにおいて登場する(移転前の)烏塚のモデル。

周りの木々や植物が伸びている他は、昔とあまり様子は変わっていないようだ。

背の高い樹木に囲まれてやや鬱蒼とした雰囲気があるので、なんとなく暗くなる前に訪れておいて良かったと思った。

まあ、そうでなくとも場所柄を考えれば明るい雰囲気でないのは当然かもしれないが。

 

輪坂神社~陽見駅~陽見駅東側ガード下

公園を出て坂を下り、再び日野駅方面へと歩みを進める。

続いて向かったのが作中の輪坂神社のモデルとなった八坂神社

ここも宝禄寺と同様、お参りすることで霊障を下げてくれるありがたい場所だ。

作中のように森や住宅街の近くにあるのではなく、交通量の多い駅前通りに面しているというのが少し意外だった。

八坂神社が建つ駅前通

こちらのフレッシュネスバーガーの隣には、あのミスドスターのモデルとなったミスドの店舗がかつては残っていたそうだが、2023年時点では残念ながら別のお店に変わってしまっている。

駅前という移り変わりが激しい立地も関係してか、この一帯には古い建物自体があまり残っていないように見えた。

陽見駅こと日野駅の外観。木造の三角屋根のフォルムが特徴的だ。

メロスをつないでいた場所はこのあたりか。

流石に当時の機体ではないと思うが、奇しくも同じ位置に証明写真機が置いてある。

撮り忘れてしまったが、駅名の看板があるのはここと別方向に面した出入口である。

そのまま歩いてすぐのところが、陽見駅(東側)のガード下にあたる場所。

こちらは西側のそれよりもさらに一層短く、作中でのトンネルのような雰囲気はまったく感じられない。

近辺にもモデルとなったような場所は見当たらなかったので、ここは純粋にロケーションだけを参考にしたのだと思う。

 

姫の杜~大階段

駅の高架をくぐってから北西方向に進んで、住宅街の一角にある姫森公園へ。

こちらの場所は作中に登場こそしていないが、迷い通りに現れる七神・カスカちゃんが奉られている姫の杜のモチーフになったと考えられる。

公園の奥には、ひとつの祠が目立たずにひっそりと佇んでいる。

解説によるとこの祠は平安時代における有力者・日奉宗頼の妻を祀ったもので、当時この辺り一帯は”姫森”と呼称されていたそうだ。

ゲーム内では祠はすでに取り壊され駐車場になってしまっていたのだが、こちらはきちんと手入れがされており、綺麗な状態で保たれているようだった。

もしかしたら、定期的にお参りに来ている人がいるのかもしれない。

 

その後はもと来た道を辿って駅方向へ戻り、再びゆうやみ坂へ。

いよいよ聖地巡礼のハイライト・大階段の登場である。

まずは入口に立って階段を仰ぎ見る。写真では分りづらいが、なかなかの傾斜。

段差の一段一段はそこまで大きくないものの、たしかにこれは落ちたら軽いケガでは済まないだろう。階段を上る際も、思わず慎重な足取りになってしまう。

 

やがて階段の中ほどに至り、下を向いてみると…

作中のものと全く同じ、あの景色が!

周囲の建物から背景の景色の細部に至るまで、まさに完全一致

20年以上昔の景観が、これほど姿を変えず留まり続けているというのは凄いことである。

 

続いて作中と同様に、そのままうしろを振り返ってみた。

残念ながら(?)例の幽霊には会うことはできなかった。

しかしながら夕暮れ時の雰囲気も相まって、なんだか自分が作品の世界に入り込んでしまったような、そんな不思議な没入感を憶えずにはいられなかった。

 

また余談であるが、こちらの場所で初めて同行の士(=夕闇聖地巡礼をしている人)らしき人を見かけたのでちょっと感激した。

いや、もしかしたら違ったかもしれないが、それ以外の目的で住宅地の何の変哲もない階段を熱心に撮影する人はあまりいないはずである(笑)

 

99'年発売のマイナータイトルであるにも関わらず、いまだに聖地を訪れるファンが存在するという事実は、本作がまさしく時代を超えた名作であることの証左と言っていいだろう。

 

 

なおこの階段は駅と住宅街を結んでいることから、夕方などは意外と人通りが多いことも付け加えておきたい。

 

たくさん写真を撮りたくなってしまうが、住民の方の迷惑にならないよう配慮しつつ行動することを忘れないようにしよう。

 

OPのカーブミラーの場所~多摩川土手

さて、いよいよこの度の夕闇聖地巡礼も終盤である。

最後は日野駅から架線沿いの道を北に抜けて、夕日に照らされた多摩川を見に行くことにした。

 

線路沿いをまっすぐ進んでいくと住宅街の入口に突き当たるのだが、その場所がOP映像で登場したカーブミラのある小道。

現在はフェンスを覆っていた蔦も無くなり、こざっぱりとした印象に。

また道幅自体も当時より広くなっているようで、あまり面影は感じ取れなかったというのが正直な所だ。

鏡面に映る家並みの風景を見るに、こちらのカーブミラーの立つ位置は昔から変わっていないようだったが。

そのカーブミラーを奥に抜けたところに、線路沿いに沿って先まで続いてそうな、か細い路地を発見した。

人一人しか通れないほどの狭い通りだが、なんだか探検気分をくすぐられる。

小道を進んでいって先に抜けると、急に視界が開けた。

スロープを上って、また下る。

心なしか、地元の小学校の通学路に似ているような気もする…

夕方、学校の帰り道に友達と探検した、何でもない通りや公園や神社たちのこと。

懐かしい景色を見ていると、そんな子供の頃の遠い記憶がまざまざと思い出されてきた。

本作に登場する、44にも及ぶさまざまな”噂”。

それらは蓋を開けてみればただのデマだったり、あるいは単なる勘違いだったりすることも多かった。

だが考えてみると子どもの頃は、誰しもが一度は身の回りに広がるなんでもないような景色や場所から、”不思議”を見出した経験があるのもまた事実ではないだろうか。

自分が子供の頃にも、ブラックナンバーを1日に7台見れば幸運が訪れるという”ブラックナンバーの噂”や、誰も居ないときにだけ微笑んでくる”笑うモナリザの噂”など思えばさまざまな噂が存在していた。しかしながら本作をプレイしてからは、あながちそれらがすべて嘘だったとはどうも思えない自分がいるのである。

 

幼少期の感性を通してのみ見える(あるいは入れる)景色や場所というのは、その時そこには確かに存在していたのではないか。

そしてそういった話を学校で友達にする中で尾ひれがついた”噂”は、やがて人から人に伝わっていき、町中へと広まっていくのである。

 

ネットが普及していなかった時代ならではの、こういったどこか懐かしささえ感じるような暮らしの中の日常。

シナリオの脇を固めている、そのような日常シーンの自然な描かれ方というのも本作の大きな魅力の一つであると思う。

 

そんなことをぐるぐる考えながら歩いているうちに、いつの間にやら住宅街を抜けて多摩川の堤防へと到着した。

川沿いは景色も良くて、ランニングや散歩で来ている人たちの姿もチラホラ見かけられた。

作中での登場回数はそこまで多く無いものの、なにかと印象深い場面で登場した多摩川の堤防。川面には太陽が輝き、いい雰囲気である。

土手に降りて付近を少し散策してみる。

陽が落ちるのに合わせて少し風が出てきたようで、涼しくなってきたのを感じる。

道も広いし、メロスの散歩にもうってつけな場所だなあ。

架線上からは、一定の間隔で新王子線もとい中央線の車両が駆け抜ける音が聞こえてくる。

夕暮れ時というのは、こういう普段は見過ごすような、ありふれた景色でさえ特別なものに変えてくれるのだから不思議だ。

さて、陽もいよいよ傾いてきた。そろそろ散歩を切り上げる頃合いのようだ。

キラキラと輝く多摩川の水面を横目に見つつ、日野駅へと戻ることにした。

 

日野駅のホームから望む大階段・OPの風景

これにて聖地巡礼もオシマイが近づいてきた訳だが、最後に日野駅のホームから望める、ちょっとした景色を2つだけ紹介しておこうと思う。

 

おそらく駅を出た後は見れないと思うので、日野駅からアクセスする場合は、ホームを出る前に忘れずにチェックするようにしたい。

 

ひとつめは、駅前の路地から建物の間を縫うように伸びる大階段の遠景

大階段の周囲は建物が多く、その全景は離れた位置からでないと望むことができない。

こうやって引きで眺めてみるとその傾斜と長さがより一層と感じられ、天に向かって果てしなく伸びるような、大階段のあの雰囲気をリアルに楽しむことができる。

そしてもうひとつは、OPの映像に写る夕日に染まった陽見の街の風景

建物の様子は幾分か変わっているものの、経過した年月を考えると驚くほど昔の名残をとどめていると言っていいのではないか。

道の奥に向かって伸びるカーブの様子などから、その面影は十分に感じ取ることができた。

 

あまり赤くは焼けなかったが、散歩の終わりにふさわしいような、どこか物寂しい雰囲気の空模様が印象的だった。暗くなってから来てみたのは正解だったかも。

 

おわりに

夕闇聖地はそれぞれの場所が広範囲に点在していることもあって、全部見ようとするとどうしても廻る範囲が広くなってしまう。

夏場にやる場合は特に、こまめに水分補給をしっかりとして動きやすい服装で臨むことをおすすめする。

 

そして高度経済成長期以降ベッドタウンとして発展を遂げてきた日野の街であるが、ゲーム発売時からの年数を考慮すると当時の景観が意外なほど多く残っていたりして、いまでも十分に巡礼のしがいのある土地と言うことができよう。

 

おすすめの時期としてはやはり夏で、できれば晴れた日の午後か夕方が良いのではないかと思う。そうすれば作中の時期ともリンクするし、なによりあの3人が学校帰りに散歩をしながら感じた、あの夏の雰囲気をよりリアルに追体験できるだろうから。

 

それでは。