玄の散歩帖

温泉、レトロ、写真など好きなものごった煮ブログ

夕闇通り探検隊・聖地巡礼 前編                         ~かつてあの3人が散歩をした陽見の街へ~

稀代の名作ジュブナイルホラー・夕闇通り探検隊

皆さんは夕闇通り探検隊というタイトルのホラーゲームをご存じだろうか?

 

スパイクより1999年に発売されたPS向けのソフトで、発売当時は振るわなかったが次第にその作品としての素晴らしさが知られるようになり、現在では隠れた傑作ホラーゲームとして再評価されている一本である。

 

あらすじとしては同じ学校に通う中学生3人組、ナオ・サンゴ・クルミが飼い犬のメロスの散歩をする傍ら、舞台である陽見(ひるみ)市で囁かれるさまざまな”噂”について検証をしていくというもの。

 

作中に登場する44の噂は心霊系のホラー色が強いものだけでなく、人の心の闇を描いた背筋が凍るようなものや、はたまた噂と呼ぶにはあまりにたわいもない、可愛らしいお話もあったりして、プレイしていて飽きがこないものになっている。

 

何より噂の検証をしていく中で垣間見える、中学生という多感な時期ならではの葛藤や成長、そして青春の様子が暖かみをもって丁寧に描かれており、エンディングを迎えた際にはちょっとした喪失感さえ憶えたほどである。

 

三人がかつて夕闇通り探検隊として、メロスと共に巡り歩いた陽見の街。

 

本記事はそのモデルとなった東京都・日野市を練り歩き、その探検の軌跡を辿ったある夏の日の記録である。

 

南平駅からサンゴの住む団地へ

モデルとなった場所の大半は基本的にJRの日野駅周辺に点在しているが、中には駅からかなり離れた所に位置しているものもある。

 

サンゴの住む陽見台団地のモデルとなった場所はその中でもひときわ遠くにあったので、

そこから巡礼をスタートしようと思い、最寄りとなる京王線南平駅を起点とした。

この日は台風一過の晴天が広がり、夏らしい陽気に満ちた日であった。

前日までのじめじめとした湿度も霧散して、まさに散歩日和の昼下がりといったところ。

駅を出てから目的地方面に住宅街を抜けていくと、多摩川の支流である浅川沿いの道に出た。

道なりに歩いていくと、遠くに見えてくる水色の団地。

こちらがサンゴの一家が暮らしている陽見台団地外観のモデルとなった建物である。

ストーリー上では”浮遊霊の噂”などで訪れることになる場所。

ゲーム内では陽見駅からゆうやみ坂を越えて、坂の上商店街の先まで行った辺りに位置しているのだが、実際にモデルとなったこちらの団地はそこからかなり離れた場所に建っている。

道に対して建っている角度などが作中のものとやや異なっているが、特徴的な昇降部の外観からみて間違いなくこちらの場所である。

 

とはいえぱっと見はありふれた団地の風景に過ぎないので、事前情報が無ければまず辿り着けない場所と言っていいだろう。

 

なお今回の聖地巡礼にあたっては主に次のサイトを参考にしたのだが、こちらの管理人様はモデルの場所を探す過程で偶然この団地を発見されたのだとか。すごいなぁ。

park3.wakwak.com

 

発売当時から20年以上経っているにも関わらず、外観自体は本当に当時のまま変わっていない。

ゲーム内ではもう少しグレーっぽい色だったが、年月が経つうちに今の色に塗り直されたようだ。

ここからあの3人の散歩が始まったのだと思うと、ちょっとしみじみする。

何枚か写真を取った後は、川を挟んでの景色も見たかったので橋を渡って対岸へ移動した。

橋から見た浅川の様子。

前日までの台風に伴う豪雨の影響か、心なしか勢いが増して土色に濁っているように見える。

河川敷に響くのは、子ども達がサッカーをしながら遊ぶ声。

河原沿いは解放感のある景色が広がるが、その代わりに日陰もまったくない。

この時は風がよく吹いてくれたので良かったが、真夏だったら辛かったかも。

その後は浅川沿いから一旦離れ、北上してJRの豊田駅方面へ。

構内を通り抜けて北口へ出る。

ここから先は日野駅方面に進路をとりつつ、道中の見所に寄り道をしながら進んでみよう。

 

パッケージの場所(跡地)~黄色い傘のバス停

駅前を右に折れて、次に向かったのがこちらの場所。

陽が落ちきった仄暗い公園の一角で、ポツンと佇んでいる子供とシーソーの姿―

 

不気味なだけでは無くなんというか寂しさや郷愁さえも感じられるような、そんな不思議な魅力をたたえているこちらのパッケージ写真。

 

実は作中ではこの場所は登場しないのだが、印象深いビジュアルだったので聖地巡礼の際にはぜひ訪れてみたいと思っていたのだ。

 

 

 

が、結論から言ってしまうと、こちらの場所は既にマンションの建設工事によって完全に消滅してしまっている

ソフトの発売時期を考えると別段不思議は無いが、下調べをする中でそれを知ったときは中々にショックだった。

 

跡地だしルートから外そうとも思ったのだが、せめてどんな様子なのか実際に自分の目で確かめておこうと思い、今回の行程に組み込むことにした。

 

かつて公園があったのは、現在プラウドシティ豊田多摩平の杜が建っている辺り。

写真のとおり、一帯は開発に伴いその姿をすっかり変えてしまっていた。

工事が始まってからしばらくは公園の背景の団地も残っていたようなのだが、いまではすっかり姿を消してしまって、面影を感じ取ることすら難しい。

改めて自分の目で確認するとちょっと寂しい気持ちになったが、街が時代と共にその姿を変えていくのはきわめて自然な事であるし、嘆くべきことでは無いのかもしれない。

まだまだ先も長いので、歩みを進める。

途中にあったよさげな喫茶店。時間があれば入ってみたかった

多摩平緑地通りを北上すると、正面突き当りに見えてくるのが日野自動車の工場。

作中では名前を変えて「旭トラック」として登場した。

そして工場の正門横にあるのが、”黄色い傘の噂”で訪れたあのバス停である。

別の位置からはゲーム画面に映る三角頭の工場の建物も見えたのだが、バス停の場所からは望めなかった。奥の木が無ければ同じように見えたのかな?

 

Zイレブン~陽見台中学校

ここからは旧甲州街道を下って、いよいよ日野駅へと近づいていく。

その道中にも見所がいくつかあるので紹介していこうと思う。

まずはあのZ・イレブンこと(笑)、セブンイレブン・日野大坂上店から。

三叉路に面した場所にあり、ゲーム発売時から現在まで息長く営業を続けている店舗である。

作中では背景として登場するのみに留まったが、ビジュアルがもう完全にセブンのそれだったので、ミスドスターと併せて記憶に残っている人も多いのではないか。

 

なお当然のことながら夕闇関連グッズは売っていなかった(笑)

もし販売したらマニアは巡礼がてら喜んで買っていきそうだけどw

 

そしてそのすぐ並びには、3人が通う陽見台中学校のモデルとなった学校も。

OPほか数々の噂において登場した場所だが、ここも中々の再現具合だった。

まあ学校なので、長居をして撮影をするようなことは避けるべきだろう。

訪問時は土日で生徒の姿もなかったので、一枚だけ写真を取ってから移動した。

 

坂の上商店街~高架下公園

中学校を越えて旧甲州街道をさらに進んでいった辺りが、作中での坂の上商店街にあたるエリアである。

黄色いテントが特徴的な御食事処・カレー工房 むさ志

こちらはデザインこそ異なっているものの、商店街にあるお店のモチーフとして使われているのだとか。

 懐かしい感じのコーラがあったので水分補給しておく

また道路の脇には、かつてゴミボックスが設置されていたスペースの名残もみられた。

”迷い通りの噂”などではゴミボックスを乗り越えて進んでいくシーンも登場したが、実際にこの場所がモデルとなったかは定かではない。

道なりに行くと前方に見えてくる高架。

その下にひっそりとあるのが、”公園の三つ子の噂”や”公園の友達の噂”の舞台となった高架下公園だ。

名前の通り高架の真下に作られていて、敷地自体は小さめなのだが、高低差がある立地のためか意外と広く感じられる。

なお正式な名称は横町児童遊園で、滑り台や遊具の配置など作中での再現度がきわめて高い場所のひとつである。

現在は砂場らしきものは見当たらず遊具だけが設置されていたのだが、昔はあったのかな?

三つ子の人形の噂でのパノラマモードの風景で印象に残っていたので、ぜひ見てみたいと思っていたのだが。

 

ちなみに公園の左側はコンクリートの足場が伸びるばかりで、ゲーム内のような公衆トイレと草むらが広がる風景とは異なっている。

ファンキーな友達の姿はなかった(笑)

ただひとつ残念だったのが、工事中のため公園の中には入れなかったこと。

耐震補強のための工事で、工期は26年の3月までを予定しているそうだ。

ただ外からでも写真を撮ることはできるので、たとえ工事期間中であっても十分に訪れる価値はあると言えるだろう。

 

公園でしばらく写真を撮った後は道なりに続くゆうやみ坂を下り、いよいよ見所が集中する日野駅周辺エリアを目指していく。

 

ここから先はハイライトとされる大階段なども登場していよいよ巡礼も佳境を迎えるわけだが、長くなってしまったのでここまでを前編とし、後半分は別記事でまとめることにした。

 

それでは。