前回に引き続き、大分・長湯温泉での湯めぐりの記録です。
しづ香温泉で存分にその鄙び空間を満喫した後は、一旦バスに乗って長湯エリアを離れた。
車窓より夏の緩やかな陽の傾きを感じつつ、いよいよ本日最後の湯巡りである。
下車した「都野」の辺りは長湯からやや外れた、どちらかといえば久住に近いエリア。
今日はここから30分ほど歩き、ラムネ温泉館以上の泡付きという評判の炭酸泉・七里田温泉館を目指す。
バス停から温泉までは基本的には一本道だが、道中には所々アップダウンがある。
進んでいくと道なりに看板も出ているので、迷う心配はあまり無いと思う。
看板を越えて坂を下り始めた所で、前方に特徴的な屋根を備えた二つの建物が見えてきた。
どうやらあそこが目的地で間違いなさそうである。
背後にそびえるのは、夕日に照らされたくじゅう連山の山並み。
この時は雲もかかっていなかったので、その雄大な山容がハッキリと視認できた。
カーブの道を下りきった辺りで、ようやく見えてきた建物の全容。
年季は入っているが、全体的に手入れが行き届いていて綺麗にされていた。
こちらが受付の入っている建物。まずはこの中の券売機で入浴券を購入する。
七里田温泉館はこちらの建物内にある木乃葉の湯と、近隣にある炭酸泉の下ん湯(したんゆ)から成っていて、どちらか一方のみを選んで入浴することも可能である。
この時は下ん湯に一人しか入っていなかったので、受付の方の勧めもあってそちらから先に入ることにした。
なお下ん湯の利用時は貸出される鍵のデポジット代として、別途現金1000円を預ける必要があるので注意。
標識に従って、田んぼと家々に囲まれた素朴な風景の中を下っていく。
受付から下ん湯までは距離にして100mも無い程度。
それにしても、知らなければここに温泉があるとは絶対に思えない景色だw
橋のたもとに差し掛かったところで左折し、段差を下ると...
目の前に黄色い壁が印象的な下ん湯の建物が現れる。
飾り気のないコンクリートの壁に踊る日本無類の炭酸泉の看板。
入口では七里田温泉の歴史が紹介されている。
現在は日帰りの営業のみだが、明治の頃には家賃を払っての湯治も受け入れていたようで、ひとつの温泉郷として賑わいを見せていたのだとか。
扉を開けると男女別の脱衣所があり、そこから階段で少し下った所に半地下の小ぢんまりとした浴室がある。
鉄分で茶色く変色した浴槽からは絶えずお湯がオーバーフローしており、こちらも当然の如く源泉かけ流しである。
シャワーが無かったので丹念にかけ湯をして入ったのだが、入浴してすぐに分かる程の驚異的なこの泡付き具合!
ラムネ温泉館の露天も凄かったが、こちらの泡付きはさらにそれ以上といった感じで、ほんとうに温めの炭酸水に浸かっているような不思議な感覚になった。
間違いなくこれまで訪れた温泉の中ではナンバー1のアワアワ具合である。
また泉温も37度と炭酸泉にしては絶妙に高めなので、体温に近い温度での不感温浴を楽しめるのも素晴らしい。
季節としてはやはり夏が最高なのは間違いないが、この程度の泉温があれば秋口くらいまでは心地よく入浴できるのではないかと思う。
泉質は含二酸化炭素ーマグネシウム・ナトリウム・カルシウムー炭酸水素塩・硫酸塩泉。
少し飲んでみると弱めの炭酸水に鉄っぽさが入り混じった感じで、美味しくはないw
お湯の表面では絶え間なく大粒の炭酸の泡が浮かんでは弾けているような状態で、その様子を観察しているだけでも幸せな気持ちになれる。
特に湯口の近くでは泡付きが一層強く、全身でこのラムネ風呂を堪能することが可能だ。
まさに日本無類の炭酸泉、看板に偽り無し。本当に来た甲斐があったというものだ。
このように泉質・風情ともに申し分の無い下ん湯だが、ひとつ難点があるとすれば、やはりその人気さゆえに浴室が混みやすいという点があるかもしれない。
全国屈指の炭酸泉だけあって、日本各地から訪れる多くの湯治客で連日賑わいを見せる下ん湯。
しかしながらその浴槽のサイズは比較的小さめなので、個人的にはMAXで6人程度、快適に入るには3人程度迄が望ましいサイズに思われた。
あまり圧迫感があるとせっかくの温泉もゆっくり楽しめないだろうから、受付時に下ん湯の込み具合を確認して、人が多いようなら木乃葉の湯から先に行ってみるのもオススメだ(こちらは割と空いている)。
幸い自分の時は3人までしか増えなかったので、ご一緒した方々とよもやま話に花を咲かせつつ、足を延ばしてまったりと時間を過ごせたので良かったが。
都合一時間程度の長湯を楽しんだ後は、帰りのバスの時間などもあるので、いそいそと木乃葉の湯へと移動。
受付から奥に進んだ所にある木乃葉の湯は、長湯らしい緑がかった濁り湯の内湯と、開放感溢れる露天風呂の組み合わせとなっている。
こちらは運良く独泉だったので、夕暮れに染まるくじゅうの山々を眺めながら、ゆっくりと湯浴みを楽しむことができた。
そして湯上りには畳敷きの休憩処にて、定番のコーヒー牛乳を一杯。
水分補給も済ませた所で、長湯への帰途につくため七里田温泉館を後にした。
***
外に出てみると、いつの間にやら辺りはもうすっかり暗くなっている。
今日は沢山歩いたし、そろそろ腹ごしらえの時間である。
バスで長湯へ戻ったあとは、中心部にある食事処 せり川へ。
こちらは温泉旅館であるかじか庵併設の食事処だが、宿泊客以外も利用可能となっている。
受付で食事処の利用を申し出ると、渡り廊下の先に広がる食事処へと案内してもらえる。
注文したのは一番人気のとり合わせ御前。
リーズナブルな価格ながら、とり天やヤマメの唐揚げ、だんご汁といった大分の地のものを一挙に堪能できる逸品である。
特にヤマメの唐揚げは揚げたてで、臭みもまったく感じられず美味しかった。
だんご汁などボリュームのある品が多かったので、これ以外の別注は特になし。
お酒はビールの他に、くじゅうの地酒などがあったのでそれらを少々頂いて〆へ。
帰りは道すがらにあったきもと商店で買い物をしてから宿に戻った。
品揃えもそこそこ多く、また長湯では夜開いているお店が少ないので、近辺に宿泊する際は結構重宝するのではないかと思う。
宿に着いてからは、1日中歩きまわった疲れが出てきたのか、ゴロゴロしているうちにすぐに眠気が襲ってきた。
既にお酒も入っているし、どうやら宿のお湯を堪能するのはまた明日にするのが良さそうである。
次の記事では、朝イチで入った宿自慢のお風呂の様子について書こうと思う。
それでは。