前回に続き、2023年の鹿児島湯巡りの記事(最終回)です。
妙見温泉街に戻った頃には陽も落ち始めており、屋外ではやや肌寒さも感じられるように。
中心部から離れるように川沿いを少し下って本日のお宿・秀水湯へとチェックイン。
一応道路に面して看板は出ているが、外からだともう普通の民家である。
呼び鈴を鳴らすと中から女将さんが出てきて、各種説明と共に部屋の鍵を渡してくれた。
なお日帰りで温泉だけ利用する場合は、竹筒の料金箱にお金を入れるだけでOK。
湯小屋はここから右手に伸びている道を進んだ奥。
後ほど詳しく紹介するが、男湯の浴室はメインの内湯と打たせ湯の二か所に分かれている。
宿泊棟は母屋の裏手の少し高い位置にあり、廊下沿いにはアパートのように客室が横一列に並んでいる。そして飼いネコなのか住み着いているのか?敷地内ではちょいちょいネコちゃんの姿も。
その後は休憩を兼ねて、少々の仮眠を取るつもりだったのだが…
思いのほか寝すぎてしまって、起きたら外はもう真っ暗であった。温泉と山歩きのコンボでどうやら思った以上に体力を消耗していたようである。
この日の宿泊客は自分だけで、泊まったのは一番手前側にあるお部屋だった。入口の戸は鍵を使って施錠できるアルミサッシになっており、カーテンで室内の目隠しができる。
湯治を前提とした食事なしの宿なので、部屋には一通りの自炊設備が揃う。室内でWi-fiも利用可能。
面白いのがキッチンに2つの蛇口があって、片方からは温泉が出るようになっていること。
芋焼酎を買ってきているので、後で温泉割りにして飲んでみることにしよう。
湯治宿ながら部屋にトイレがあるというのも嬉しいポイントである。
流石にウォシュレットは付いていないが洋式でとてもキレイ。
湯小屋へ降りる階段手前には、洗濯機と電子レンジが設置してあり自由に使うことができる。
ただ見ての通り心もとない明かりしかなく、夜はかなり暗いので注意。
階段を下って、まずはメインの内湯から。
簡素な脱衣所付きの湯小屋は年季が入っており良い感じに鄙びている。
おお~っ!
くすんだ湯桶に錆び切った蛇口、そして壁の変色具合等々、痺れるような空気感の浴室だ。
深めの湯舟は、浸かると首まですっぽりと収まる感じ。
適温の金気臭香るお湯はとても気持ちが良く、じっとしていると体への泡付きも確認することができた。
そして何より特筆すべきはこの凄まじい源泉投入量。
浴槽のサイズに(良い意味で)見合わない量のお湯が怒涛の勢いでかけ流しされており、湯舟の縁からはあふれ出た大量のお湯が常にオーバーフローしている。
この時は自分だけだったのでいわゆるトド寝も楽しませてもらったのだが、まるで温かい清流の上に身を委ねているような気分で、思わず寝てしまいそうなくらいリラックスしてしまった(当然背中もしっかりと茶色く染まった)。
内湯をしっかりと満喫したところで、続いては打たせ湯へ。
こちらは内湯の建物からいったん外に出て1m位歩いた先にあるのだが、脱衣所が備えられていない点には注意したい。メインの湯小屋の脱衣所からは裸で外を歩くことになるので(ほんの数歩分とはいえ)周囲に人がいないかよく確認するように。
写真が暗くて見ずらいが、左側の小さい方は水風呂である。
手で触ってみるとなかなかの冷たさだったから、この時入ったのは右側の打たせ湯のみ。
こちらはメインの内湯に比べて若干ぬるめであった。
お風呂上りの夜ご飯には、レンチンの麻婆丼とその他おつまみを少々。
いずれも道中にコンビニで買ってきたもので何とも味気無いが、時間的に温泉街のお店はもう閉まっているので致し方なし。
せっかく西日本に来たので、関東では売ってないカールも忘れずに購入。
普通に美味しいので全国で売ってほしいんだけどなあ。
お酒はビールなどに加えて、芋焼酎の三岳を温泉割りで。
三岳はもともと飲みやすい銘柄だが、なんだかより一層まろやかになったような感じがして、さっぱりと頂けた(よく見ると炭酸成分由来の小さな気泡がコップの中に舞っている)。
その後は特にすることも無かったので酒を呑みつつ本を読むなどして、夜12時ごろには就寝。
***
翌朝は早起きして、再びあのお風呂へ。
なんだか昨日の夜よりもさらに勢いが増しているような…?
夜は暗くて分からなかったがお湯はほんのりとした笹濁りで、前日に行った犬飼共同浴場のそれを思い出した。
排湯口へ続いている周縁部には常にお湯が満たされており、川のごとき流れを作っている。
床へのオーバーフロー具合も物凄いし、何だかもうめちゃくちゃ(歓喜)
もう、どこからどう見ても完璧だ。
茶色く染まった湯舟の縁を撫でまわしながら、滝のように流れ続けるお湯にただただ目を奪われてしまった。
体への泡付き具合も相変わらず素晴らしく昨夜と同等かそれ以上のレベル。
圧倒的な湯量とこの小さな浴槽のサイズによって、お湯の鮮度が極めて高く保たれている証拠である。
湯舟周りにある岩も温泉成分が付着してなんとも芸術的なデザインに。
宿泊客が自分のみという状況を活かし、日帰り入浴が始まる朝8時半ギリギリまでこの極上湯を独泉で堪能した。思い返してもホントにいい湯だったなあ。
そして打たせ湯へも。
こちらも夜とはまた違った明るい雰囲気で、周囲の緑がなんだか目に優しくて良い。
念のため水風呂にもチャレンジしたが、やっぱり冷たすぎてこちらはすぐに断念(笑)
最後にもう一度内風呂で温まり直してから、部屋に戻ってチェックアウトの準備をした。
妙見温泉 秀水湯 感想まとめ
全体的に昔ながらの湯治宿といった風情だが、古いながらも部屋や共用部は清潔に保たれているという印象。温泉マニアには勿論のこと、その空港への近さや静かさなどから意外とビジネス利用にもお勧めできる宿だと思った。
素泊まり料金も3000円と格安で自炊設備も整っているので、長期で連泊するのも面白そう。24時間温泉に入れるので、日帰り客が帰った後にゆっくりと湯浴みを楽しむのが良いだろう。
今回は回れなかったが妙見温泉には他にも良さげな立ち寄り湯が多く、泉質も好みだったので是非とも再訪したい温泉街の一つとなった。前述したように空港からのアクセスが非常に良いので、鹿児島に行く機会さえあれば旅程に組み入れやすいのも嬉しいところである。
次回行く際にはスーパーなどで地産の食材を仕入れて自炊しつつ、周辺の温泉をハシゴして回ってみたいと思った。
それでは。